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強迫性障害

F42 強迫性障害 Obsessive compulsive disorder

強迫症/強迫性障害 Obsessive compulsive disorder

 

疾患の具体例

28歳、男性。外出するときは30分以上かけて窓やドアの戸締まりを確認します。会社を出るときは、忘れ物がないか、30分以上かけて確認しなければ気が済みません。電車を降りるときも何度も席を振り返り、忘れ物を確認します。風呂上がりに身体を拭くときは、一滴も水気が残らないように何度も身体を拭くのが自分なりの決まりになっています。最近は家族にも同じことを要求するようになりました。いつも何か忘れて一大事になるような気がしてならず、確認に長い時間をかけてしまうため、仕事の能率は上がらず、生活しているだけで疲弊します。自分でも過剰だと分かっているのですが、確認せずにいられません。

 

特 徴

強迫性障害(強迫症)の特徴は、繰り返す「強迫思考」または「強迫行為」(儀式行為)です。

強迫思考とは、患者さんの心の中に繰り返し浮かぶ観念、またはイメージなどで、何かをせずにいられない衝動を含みます。例えば、自分が汚染されるのではないか、暴力を受けるのではないか、誰かを傷つけてしまうのではないかといった考えが浮かび、苦痛や不安を感じるのです。患者さん自身、強迫思考を振り払おうとしてもそうできない苦しさがあります。

強迫観念による苦痛を避けたり中和したりするための行動が、脅迫行為です。過剰なまでに手を洗ったり、物事を確認したり、心の中で特定の言葉を繰り返したりと、人によって様々です。かなり厳密に強迫行為をすることを自分に課している場合もあります。しかし、強迫行為は強迫観念にまったく関係のないこともあります。例えば、恋人に暴力を振るわないために机の上の物を左右対称に整理する、などです。あるいは、身体が汚染されないために、毎日3時間もシャワーを浴びるなど、明らかに過剰なこともあります。

この障害のある人の多くは、病識(自分は病気だという自覚)があります。例えば、外出前にガスの元栓を30回も確認しなければ気が済まなくても、「おそらく家が全焼することはないだろう」と思えているのです。しかし、ごく一部の人は病識がないか妄想的な信念をもっており、「ガスの元栓は30回確認しなければ家が全焼する」と確信していまいす。

なお、強迫性障害(強迫症)は仕事や学業、社会生活の質を著しく低下させます。強迫行為のために時間を浪費するほか、汚染への不安をもつ人は1日に何度も手を洗い、皮膚が荒れてしまうことが懸念されます。誰かに暴力を振るわれるという強迫観念の場合は、家族や友人との人間関係を避けることもあります。

 

有病率

アメリカにおける12ヵ月有病率は1.2%で、世界的な有病率(1.1〜1.8%)とあまり変わりません。子どもの罹患率は男児のほうが多いものの、成人では女性のほうが若干多いとされています。

 

経 過

アメリカにおける強迫症の平均発症年齢は19 .5歳で、25%は14歳までに発症しています。35歳以降の発症は珍しいものの、起こり得ます。男性は女性に比べると早期に発症し、男性の25%近くが10歳以前の発症です。症状の始まりは、典型的には緩やかですが、急性発症も報告されています。

なお、治療を受けない場合は慢性的な経過をとり、しばしば増悪と軽快を繰り返します。成人の患者さんで治療を受けない場合は寛解率が低いことが分かっています。

 

原 因

気質要因:

子どもの頃からの自分を否定的に思う気持ちや、行動制止(挨拶や家事など、日常のちょっとした作業がつらくなる)は、強迫症の危険因子です。

環境要因:

子どもの頃の身体的・性的虐待や、ストレスに満ちた出来事、外傷的な出来事は、強迫症になる危険性を高めます。

遺伝要因と生理学的要因:

強迫症の患者さんの第一度親族が強迫症の割合は、その障害がない人達の10倍にも相当します。

 

治 療

強迫性障害の治療は、薬物療法や行動療法が一般的になっています。薬物療法は、SSRIかクロミプラミンの服用から始め、効かなければ他の薬を使用します。その場合、バルプロ酸、リチウム、カルバマゼピンなどを加えることが多いとされています。

 

診断基準:ICD-10

確定診断のためには、強迫症状あるいは強迫行為、あるいはその両方が、少なくとも2週間連続してほとんど毎日存在し、生活する上での苦痛か妨げの原因でなければならない。強迫症状は以下の特徴をもっているべきである。

  1. 強迫症状は患者自身の思考あるいは衝動として認識されなければならない。
  2. もはや抵抗しなくなったものがほかにあるとしても、患者が依然として抵抗する思考あるいは行為が少なくとも1つなければならない。
  3. 思考あるいは行為の遂行は、それ自体が楽しいものであってはならない(緊張や不安の単なる低減は、この意味で楽しいとはみなされない)。
  4. 思考、表象あるいは衝動は、不快で反復性でなければならない。

 

診断基準:DSM-5

A. 強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在

強迫観念は以下の1. と2. によって定義される:

  1. 繰り返される特徴的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており、たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる。
  2. その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。

 

強迫行為は以下の1. と2. によって定義される:

  1. 繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数える、声に出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に対して、または厳密に適用しなくてはいけないある決まりに従ってそれらの行為を行うよう駆り立てられているように感じている。
  2. その行動または心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている。しかしその行動または心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりをもたず、または明らかに過剰である。

注:幼い子どもはこれらの行動や心の中の行為の目的をはっきり述べることができないかもしれない。

B. 強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上かける)。または臨床的に意味のある苦痛、ま たは社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。

D.その障害は他の精神疾患ではうまく説明できない(例:全般不安症における過剰な心配、醜形恐怖症における容貌へのこだわり、ため込み症における所有物を捨てたり手放したりすることの困難さ、抜毛症における抜毛、皮膚むしり症における皮膚むしり、常同運動症における常同症、摂食障害における習慣的な食行動、物質関連障害および嗜好性障害群における物質やギャンブルへの没頭、病気不安症における病気をもつことへのこだわり、パラフィリア障害群における性的衝動や性的空想、秩序破壊的・運動制御・素行症群における衝動、うつ病における罪悪感の反芻、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群における思考吹入や妄想的なこだわり、自閉スペクトラム症における反復的な行動様式)

該当すれば特定せよ

病識が十分または概ね十分:その人は強迫症の信念がまったく、またはおそらく正しくない、あるいは正しいかもしれないし、正しくないかもしれないと認識している。

病識が不十分:その人は強迫症の信念がおそらく正しいと思っている。

病識が欠如した妄想的な信念を伴う:その人は強迫症の信念は正しいと完全に確信している。

該当すれば特定せよ

チック関連:その人はチック症の現在症ないし既往歴がある。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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