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摂食障害

障害の説明

摂食障害とは、精神的な原因によって食行動に異常をきたす障害のことを指し、大きく2種類に分けられます。

食行動を拒否しそれによって極端にやせてしまうものを神経性無食欲症(Anorexia Nervosa:AN)、一方食べたいという衝動を抑えられずむちゃ食いを繰り返してしまうものを神経性大食症(Bulimia Nervosa:BN)と呼びます。

 

疫 学

発症年齢は10代後半から20代前半にかけて多く、近年では低年齢および高年齢にかけて発症年齢の幅が両方向に拡大する傾向があります。

男女比は1:6〜1:10で女性が圧倒的に多く、女性における神経性無食欲症の有病率は0.5%〜3.7%、神経性大食症では1.1%〜4.2%です。

予後は、調査によっては全体の約3分の1が治癒し、3分の1が軽快していますが、1、2割は変化なく長引き、全体の5%が死に至っているとされています。神経性無食欲症は近年ではモデルやバレリーナなど職業柄、スリムな体を必要とする若い女性の中で特に頻度が高いと言われています。

 

病 因

病因に関しては様々な角度から検討されています。大きく内的要因と環境的要因に分けられます。

内的要因としては身体的要因や心理的要因、環境的要因としては家族的要因や文化的要因が挙げられます。

身体的要因としては脳の摂食調整機構の機能異常が指摘されており、かなり詳細に脳の機能障害について現在では調べられています。

心理的要因としては人生早期における養育者との関係が影響している可能性を指摘されていましたが、現在では客観的な証拠には乏しい意見であると考えられています。

家族的要因としては家族システムの機能不全を重視するものもありますが、必ずしも、機能不全のあるご家族だから発症するというものではありません。文化的要因としては痩せ=美とする今日の風潮との関連が指摘されています。

 

症 状

身体的症状としては、極端な痩せあるは肥満を伴う場合がありますが、体型は標準的な方も少なくありません。痩せに伴い無月経や低血圧、徐脈、低体温、脱毛、うぶ毛、便秘、貧血、低血糖なども認められます。

一方、過食にはむくみがみられることがあります。また、嘔吐による虫歯や低カリウム血症といった症状が随伴することもあります。 食行動の異常としては、不食、極端な偏食、一気にむさぼるように食べる過食、おう吐、また隠れ食いや盗み食い、口内で反芻行動をするチューイング、強迫的調理などが挙げられます。

その他の行動的特徴としては特に痩せを呈している時には、体力が低下しているにもかかわらず活動性が亢進する場合もあります。その他さまざまな逸脱行為として、下剤、利尿剤、痩せ薬などの乱用や盗癖、性的逸脱行為、自傷行為などが挙げられています。

情緒面については、過食症状には強い後悔や抑うつ気分、情緒的な引きこもりといった心理的苦痛が伴う一方、拒食症状にはその反対に全能感を抱くこともあります。

 

治療

神経性無食欲症の場合、極端な痩せが認められる際に、場合によっては入院治療による栄養状態の回復が必要となることがあります。

神経性大食症の治療には、ほとんどの場合入院治療は必要ありませんが、無茶食いの抑制がきかない場合や、排出行為により電解質や代謝の異常が起こる場合には入院が必要となることがあります。また、この障害に対しては個人のみならず家族を含む総合的な治療が行われる場合もあります。

まず、薬物療法が試されるのが普通ですが、薬物療法による改善率は必ずしも高くないため、他の精神療法が併用されることが多いのが特徴です。入院時には行動制限療法が行われることが多いですが、外来診療では、疾患教育を中心とした心理教育、認知行動療法やカウンセリング、ご家族に対するカウンセリングや疾患教育、場合によっては家族療法や精神科デイケアなどにより治療がなされます。

摂食障害では、いくつかの自助グループがあり、ご本人やご家族を支えてくれることがあるため、自助グループの利用を図ることがあるのも特徴です。

 

診断基準(神経性無食欲症)

  DSM-W-TR ICD-10
コード 307.1 F50.0

年齢と身長に対する正常体重の最低限,またはそれ以上を維持することの拒否(例:期待される体重の85%以下の体重が続くような体重減少;または成長期間中に期待される体重増加がなく,期待される体重の85%以下になる)

体重が(減少したにせよ,はじめから到達しなかったにせよ)期待される値より少なくとも15%以下下まわること,あるいはQuetelet’s body-mass indexが17.5以下,前思春期の患者では,成長期に本来あるべき体重増加がみられない場合もある.

B

体重が不足している場合でも,体重が増えること,または肥満することに対する強い恐怖

体重減少は「太る食物」を避けること.また,自ら誘発する嘔吐,緩下剤薬の自発的使用,過度の運動,食欲抑制薬および/または利尿薬の使用などが1項以上ある.

C

自分の体重または体型の感じ方の障害,自己評価に対する体重や体形の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認

肥満への恐怖が存在する.その際,特有な精神病理学的な形をとったボディイメージのゆがみが,ぬぐい去りがたい過度の観念として存在する.そして患者は自分の体重の許容限度を低く決めている.

D

初潮後の女性の場合は,無月経,すなわち月経周期が連続して少なくとも3回欠如する(エストロゲンなどのホルモンの投与後にのみ月経が起きている場合,その女性は無月経とみなされる)

視床下部下垂体腺系を含む広汎な内分泌系の障害が,女性では無月経,男性では性欲,性的能力の減退を起こす(明らかな例外としては避妊用ピルとして最もよく用いられているホルモンの補充療法を受けている無食欲症の女性で,性器出血が持続することがある).また,成長ホルモンの上昇,甲状腺ホルモンによる末梢の代謝の変化,インスリン分泌の異常も認められることがある.

E  

もし発症が前思春期であれば,思春期に起こる一連の現象は遅れ,あるいは停止することさえある(成長の停止,少女では乳房が発達せず,一次性の無月経が起こる.少年では性器は子どもの状態のままである),回復すれば思春期はしばしば正常に完了するが,初潮は遅れる.

 

病型

制限型

現在の神経性無食欲症のエピソード中,その人は規則的にむちゃ食いや排出行動(つまり,自己誘発嘔吐,または下剤,利尿剤,または浣腸の誤った使用)を行ったことがない. むちゃ食い/排出型 現在の神経性無食欲症のエピソード期間中,その人は規則的にむちゃ食いや排出行動(すなわち,自己誘発性嘔吐,または下剤,利尿剤,または浣腸の誤った使用)を行ったことがある.

鑑別診断

抑うつ的あるいは強迫的な症状,同様にパーソナリティ障害の諸特徴を伴うことがあり,これが鑑別診断を困難にし,あおよび/または複数の診断コードを用いる必要が生じさせる.若い患者で鑑別を要する体重減少の身体的原因としては,慢性消耗性疾患,脳腫瘍,クローン病や吸収不全症候群のような腸の障害がある.

 

診断基準(神経性大食症)

  DSM-W-TR ICD-10
コード 307.51 F50.2

むちゃ食いのエピソードを繰り返し,むちゃ食いのエピソードは以下の2つによって特徴づけられる.

  1. 他とはっきり区別される時間帯に(例:1日の何時でも2時間以内),ほとんどの人が同じような時間に同じような環境で食べる量よりも明らかに多い食物を食べること
  2. そのエピソード期間では,食べることを制御できないという感覚(例:食べるのをやめることができない,または,何をまたはどれほど多く,食べているかを制御できない感じ)

持続的な接触の没頭と食物への抗しがたい渇望が存在する.患者は短時間に大量の食物を食べつくす過食のエピソードに陥る.

B

体重の増加を防ぐために不適切な代償行動を繰り返す.例えば,自己誘発性嘔吐;下剤,利用剤;浣腸,またはその他の薬剤の誤った使用;絶食;または過剰な運動

患者は食物の太る効果に,以下の1つ以上の方法で抵抗しようとする.すなわち,自ら誘発する嘔吐,緩下剤の乱用,交代して出現する絶食期,食欲抑制薬や甲状腺末,利尿薬などの薬剤の使用.糖尿病の患者に過食症が起これば,インスリン治療を怠ることがある.

C

むちゃ食いおよび不適切な代償行動はともに,平均して,すくなくとも3か月間にわたって週2回起こっている.

この障害の精神病理は肥満への病的な恐れから成り立つもので,患者は自らにきびしい体重制限を課す.それは医師が理想的または健康的と考える病前体重に比べてかなり低い.双方の間に数カ月から数年にわたる間隔をおいて神経性無食欲症の病歴が,常にではないがしばしば認められる.この病歴のエピソードは完全な形で現れることもがるが,中等度の体重減少および/または一過性の無月経を伴った軽度ではっきりしない形をとることもある.

D

自己評価は,体型および体重の影響を過剰に受けている.

 

E 障害は,神経性無食欲症のエピソード期間中にのみ起こるものではない.

 

 

病型

排出型

現在の神経性大食症のエピソード期間中,その人は定期的に自己誘発性嘔吐をする,または下剤,利尿剤,または浣腸の誤った使用をする. 非排出型 現在の神経性大食症のエピソード期間中,その人は,絶食または過剰の運動などの他の不適切な代償行為を行ったことがあるが,定期的に自己誘発性嘔吐,または下剤,利尿剤,または浣腸の誤った使用はしたことがない.

鑑別診断

  1. 反復性の嘔吐を招くような上部消化管の障害(特異的な精神病理を欠く).
  2. より全般的なパーソナリティの異常(摂食障害はアルコール依存や万引きのような軽犯罪を伴うことがある)
  3. うつ病性障害(過食症患者はしばしば抑うつ症状を経験する).

☆参考・引用文献

  • 精神医学ハンドブック 小此木啓吾・深津千賀子・大野裕編 1998 創元社
  • 知っておきたい精神医学の基礎知識 サイコロジストとコ・メディカルのために 上島国敏・上別府圭子・平島奈津子編 2007 誠信書房
  • カプラン精神医学ハンドブック 融道男他訳 2003 メディカルサイエンスインターナショナル
  • DSM-W-TR精神疾患の診断・統計マニュアル 高橋三郎他訳 2003 医学書院
  • ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン 融道男他監訳 医学書院
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