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神経性過食[大食]症

F50.2 神経性過食[大食]症

Bulimia Nervosa

神経性過食症/神経性大食症

 

疾患の具体例

24歳、女性。自分の容姿に自信がなく、普段からダイエットを意識してカロリーの低いものばかり食べています。しかし、週に1回は、爆発したように過食に走ります。夜、コンビニで大量の食べ物を買い込み、むさぼるように食べ続けます。限界まで食べたあとは、喉に指を差し込んで吐き出します。過食をしたあとは体重が増えないか心配で仕方なく、しばらく、コンニャクや野菜などしか食べません。月経不順や不整脈がありますが、健康を害しているとは思いません。

 

特 徴

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」によると、神経性過食症の本質的な特徴は繰り返される過食です。過食とは、ほとんどの人が同様の状況・時間内に食べる量よりも、明らかに多い量を食べることです。食べることを自分で抑制できない感覚も伴います。満腹で気持ちが悪くなったり、胃が痛くなったりするまで続くことが多く見受けられます。

本人は過食を恥ずかしいことだと思っており、通常は人に隠れて行われます。過食しているところに、誰かが突然、入室したときなどは、食べるのをやめることもあります。

神経性過食症のもう1つの本質的な特徴に、体重増加を防ぐための不適切な代償行動があります。よくあるのは嘔吐です。人によっては嘔吐自体が目的となり、吐くために過食をしようとしたり、わずかな食事のあとにも吐こうとしたりします。体重増加を防ごうと1日以上、絶食したり、過剰な運動を行ったりすることもあります。また、自分を評価する基準として、体型や体重を過度に重視するのも神経性過食症の本質的な特徴です。

WHOによる診断ガイドライン「ICD-10」によると、嘔吐の繰り返しによって、電解質の異常、身体的合併症(手足のしびれ、てんかん発作、不整脈、筋力低下)が起こりやすくなります。

 

有病率

「DSM-5」によると、若い女性における神経性過食症の12ヵ月有病率は、1〜1.5%です。成人期前期で最も有病率が高くなります。男性は女性よりずっと少なく、男女比はおよそ1:10です。

 

経 過

「ICD-10」によると、神経性過食症は、神経性無食欲症のあと、あるいは先に続いて起きることがあります。例えば、それまで無食欲症だった患者さんが、月経の再開によって改善したように見えながら、その後、過食と嘔吐を繰り返すようになるのです。

また、「DSM-5」によると、神経性過食症の経過は慢性的だったり、再発や寛解を繰り返したりします。治療を受けると明らかによくなりますが、多くの場合、治療の有無にかかわらず症状は少なくなるようです。また、神経性過食症は死亡の危険性(総死亡率も自殺による死亡率も)が高いと報告されており、粗死亡率は10年間でおよそ2%です。

 

原 因

気質要因:

体重への関心、低い自尊心、抑うつ症状、社交不安症、小児期の過剰不安症は、神経性過食症の危険性を高めることがあります。

環境要因:

スリムな身体を理想とする風潮を取り込むことで、体重への関心が増大し、神経性過食症に発展する危険があることがわかっています。子どもの頃に性的あるいは身体的虐待を受けた人は、神経性過食症を発症する危険が高くなります。

遺伝要因と生理学的要因:

子どもの頃の肥満と早い第二次性徴は、神経性過食症の危険を高めます。また、神経性過食症は家族内伝達があるようです。

経過の修飾要因:

精神科的併存症が重症であることは、神経性過食症の長期的な経過の悪さにつながることがあります。

 

治 療

『カプラン 臨床精神医学テキスト』によると、合併症のない神経性過食症の多くは、入院治療を必要とせず、外来治療で対応が可能です。しかし、過食を制御できない、あるいは外来治療の効果がなかったり、自殺衝動や物質乱用などさらなる精神医学的症状があったりする場合は、入院が必要となります。また、重度の排出行動による電解質異常や代謝異常のため、入院が必要になることもあります。

 

診断基準:ICD-10

神経性過食[大食]症

確定診断には、以下の障害のすべてが必要である。

  1. 持続的な摂食の没頭と食物への抗しがたい渇望が存在する。患者は短時間に大量の食物を食べつくす過食のエピソードに陥る。
  2. 患者は食物の太る効果に、以下の1つ以上の方法で抵抗しようとする。すなわち、自ら誘発する嘔吐、緩下薬の乱用、交代して出現する絶食期、食欲抑制薬や甲状腺末、利尿薬などの薬剤の使用。糖尿病の患者に過食症が起これば、インスリン治療を怠ることがある。
  3. この障害の精神病理は肥満への病的な恐れから成り立つもので、患者は自らにきびしい体重制限を課す。それは医師が理想的または健康的と考える病前の体重に比べてかなり低い。双方の間に数カ月から数年にわたる間隔をおいて神経性無食欲症の病歴が、常にではないがしばしば認められる。この病歴のエピソードは完全な形で現れることもあるが、中等度の体重減少および/または一過性の無月経を伴った軽度ではっきりしない形をとることもある。

 

診断基準:DSM-5

神経性過食症/神経性大食症

A. 反復する過食エピソード。過食エピソードは以下の両方によって特徴づけられる。

  1. 他とはっきり区別される時間帯に(例:任意の2時間の間の中で)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量より明らかに多い食物を食べる。
  2. そのエピソードの間は、食べることを抑制できないという感覚(例:食べるのをやめることができない、または、食べるものの種類や量を抑制できないという感覚)。

B. 体重の増加を防ぐための反復する不適切な代償行動、例えば、自己誘発性嘔吐;緩下剤、利尿薬、その他の医薬品の乱用;絶食;過剰な運動など。

C. 過食と不適切な代償行動が共に平均して3ヵ月間にわたって少なくとも週1回は起こっている。

D. 自己評価が体型および体重の栄養を過度に受けている。

E. その障害は、神経性やせ症のエピソードの期間にのみ起こるものではない。

 

該当すれば特定せよ

部分寛解:かつて神経性過食症の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間、診断基準のすべてではなく一部を満たしている。

完全寛解:かつて神経性過食症の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間、診断基準のいずれも満たしていない。

 

現在の重症度を特定せよ

重症度の最も低いものは、不適切な代償行動の頻度に基づいている(以下を参照)。そのうえで、他の症状および機能の能力低下の程度を反映して、重症度が上がることがある。

軽度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して1〜3回

中等度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して4〜7回

重度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して8〜13回

最重度:不適切な代償行動のエピソードが週に平均して14回以上

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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