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行為障害

F91 行為障害  Conduct disorders

素行症/素行障害 Conduct disorders

 

疾患の具体例

12歳、男児。小学校3年生頃から、友人の物を盗んだり、学校で飼育している動物をいじめたりしていました。徐々に親や教師に反抗するようになり、最近は夜に家を抜け出したり、コンビニで万引きをしたりするようになりました。親が注意すると「うるせえ」と激高し、殴りかかってきます。学校では孤立し、授業中は寝てばかりいます。親に連れられて精神科クリニックを受診しました。

 

特徴

WHOの診断ガイドライン「ICD-10」に記載されている「行為障害」は、反社会的、攻撃的、反抗的な行動を、何度も繰り返すことが6ヵ月以上持続する障害です。 アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では「素行症/素行障害」の名称で記載されています。素行症の特徴的な行動は、以下4つのグループに分けられます。

  • 他人や動物への攻撃性
    いじめ、強迫、威嚇的な行動をとることがあります。最近では、インターネット上のいじめも含みます。しょっちゅう取っ組み合いのケンカをし、時にバットやナイフといった凶器を使います。
  • 物の破壊
    車の窓を割ったり、学校の物を壊したり、他人の所有物を破壊します。放火にいたる場合もあります。
  • うそや窃盗
    借金や義務を逃れるために、簡単にうそをついたり約束を破ったりします。万引きや文書偽造なども含みます。
  • 重大な規則違反
    学校や家庭、職場のルールを違反します。親が禁止しても夜中に外出したり、家に帰ってこなかったりすることもあります。学校の勉強も怠けます。

また、素行症のある人は、タバコやお酒、性行為を早いうちから始める傾向があります。 これらの結果、学校を退学したり、職場にいられなくなったり、性感染症や無計画妊娠にいたる場合があります。

 

有病率

素行症の年間有病率は一般人口で2〜10%以上と推定され、中央値は4%です。小児から青年期にかけて有病率が上昇し、女性よりも男性に多く見られます。

 

経過

最初に現れる症状はそれほど深刻でなく、嘘をついたり万引きをしたりする程度です。一方で、後から現れる症状はより深刻になる傾向があり、強姦や被害者の面前での盗みなどが挙げられます。 なお、素行症のある人の大多数は、成人期までに寛解します。特に、10歳以降に症状が現れた「青年期発症型」で軽度の人は、大人になると十分に仕事も社会生活も営めるようになります。しかし、低い年齢で症状が現れた「早発型」は予後が悪く、大人になってから犯罪的行動や物質関連障害群になる可能性が高いと予測されます。

原因

気質要因:

気難しく感情調整の難しい気質や平均以下の知的能力、特に言語性IQの低さなどが含まれます。

環境要因:

(1)家族に関する危険要因・・・親の拒絶やネグレクト、一貫性のない子育て、行きすぎたしつけ、身体的または性的虐待、早期の施設での生活、頻繁な養育者の変更、大家族、親の犯罪歴、家庭内の精神病理(例:物質関連症候群)が含まれます。

(2)地域に関する危険要因・・・同世代からの拒絶、非行集団との関係、近隣の暴力に接することが含まれます。

上記2つの危険要因は、10歳以前に症状が現れる「小児期発症型」のある人でより深刻な傾向があります。

遺伝要因と生理学的要因:

両親または養父母などに素行症があると、子どもも素行症になる危険性が高くなります。また、重度のアルコール使用障害、抑うつ障害群、双極性障害群、統合失調症があったり、注意欠如・多動症または素行症だったことのある両親の子どもも、素行症のリスクが高いようです。

 

治療

規則が首尾一貫している環境は、さまざまな問題行動を抑えることに役立ちます。家庭でそうした環境が作られると、適切な行動が促進されることがあります。しかし、それができない家庭では、先に両親に精神医学的問題がないかを確かめ、必要に応じて治療をします。家族が虐待したり、混乱したりしているような場合は、子どもを家族から引き離して、首尾一貫した環境におかねばならないこともあります。

また、問題解決技法の上達を目指す個人精神療法が有益なこともあります。日常的な出来事に対し、不適切な反応をしていることが続いているのを、カウンセリング等を通じて改善していきます。 薬物療法は、補助的治療として有益です。表立った爆発的な攻撃性は、抗精神病薬が有効な場合があります。

 

診断基準:ICD-10

行為障害の存在についての判断は、小児の発達レベルを考慮に入れなければならない。例えば、かんしゃくは3歳児の発達段階では正常範囲であり、単にそれがあるだけでは診断の根拠とならない。同様に、(暴力犯罪のような)他人の市民権の侵害は、ほとんどの7歳児の能力の範囲内にはないので、そのためこの年齢層にとっての必要な診断基準とはならない。

診断の基礎となる行動の例は、次のようなものである。過度のけんかやいじめ、動物や他人への残虐素行、所有物へのひどい破壊行為、放火、盗み、繰り返しうそをつくこと、学校のずる休みと家出、たび重なるひどいかんしゃく、反抗的で挑発的な行動、持続的で激しい反抗、これらのうちどれでも、その程度が重篤であれば、診断に十分であるが、単発の反社会的行為はその限りでない。

除外基準には、統合失調症、躁病、広汎性発達障害、多動性障害、うつ病などの、まれではあるが重篤な病態を基礎とするものが含まれる。

上記の行動が6ヵ月あるいはそれ以上持続しなければ、この診断をくだすことは勧められない。

 

診断基準:DSM-5

A. 他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または規則を侵害することが反復し持続する行動様式で、以下の15の基準のうち、どの基準群からでも少なくとも3つが過去12ヵ月の間に存在し、基準の少なくとも1つは過去6ヵ月の間に存在したことによって明らかとなる。

人および動物に対する攻撃性

  1. しばしば他人をいじめ、脅迫し、威嚇する。
  2. しばしば取っ組み合いのけんかを始める。
  3. 他人に重大な身体的危害を与えるような武器を使用したことがある(例:バット、煉瓦、割れた瓶、ナイフ、銃)。
  4. 人に対して身体的に残酷であった。
  5. 動物に対して身体的に残酷であった。
  6. 被害者の面前での盗みをしたことがある(例:人に襲いかかる強盗、ひったくり、強奪、凶器を使っての強盗)。
  7. 性行為を強いたことがある。

所有物の破壊

  1. 重大な損害を与えるために故意に放火したことがある。
  2. 故意に他人の所有物を破壊したことがある(放火以外で)。

虚偽性や窃盗

  1. 他人の住居、建造物、または車に侵入したことがある。
  2. 物または好意を得たり、または義務を逃れるためしばしば嘘をつく(例:他人をだます)。
  3. 被害者の面前ではなく、多少価値のある物品を盗んだことがある(例:万引き、ただし破壊や侵入のないもの、文書偽造)

重大な規則違反

  1. 親の禁止にもかかわらず、しばしば夜間に外出する行為が13歳未満から始まる。
  2. 親または親代わりの人の家に住んでいる間に、一晩中、家を空けたことが少なくとも2回、または長期にわたって家に帰らないことが1回あった。
  3. しばしば学校を怠ける行為が13歳未満から始まる。

B. その行動の障害は、臨床的に意味のある社会的、学業的、または職業的機能の障害を引き起こしている。

C. その人が18歳以上の場合、反社会性パーソナリティ障害の基準を満たさない。

いずれかを特定せよ

312.91(F91.1)小児期発症型:10歳になるまでに素行症に特徴的な基準の少なくとも1つの症状が発症。

312.82(F91.2)青年期発症型:10歳になるまでに素行症に特徴的な症状はまったく認められない。

312.89(F91.9)特定不能の発症年齢:素行症の基準は満たしているが、最初の症状の出現時期が10歳より前か後か判断するのに十分な情報がない。

該当すれば特定せよ

向社会的な情動が限られている:この特定用語に適合するには、その人は過去12ヵ月にわたって持続的に下記の特徴の2つ以上をさまざまな対人関係や状況で示したことがなければならない。これらの特徴は、この期間を通じてその人の典型的な対人関係と情動的機能の様式を反映しており、いくつかの状況でたまたま怒るだけのものではない。このため、この特定用語の基準を評価するためには、複数の情報源が必要になる(例:親、教師、仕事仲間、拡大家族、同世代の友人)。

後悔または罪責感の欠如:何か間違ったことをしたときに悪かったまたは罪責感を感じない(逮捕されたり、および/または刑罰に直面した場合だけ後悔することをのぞく)。自分の行為の否定的な結果に関する心配を全般的に欠いている。例えば、誰かを傷つけた後で後悔しないし、規則を破った結果を気にしない。

冷淡――共感の欠如:他者の感情を無視し配慮することがない。その人は冷淡で無関心な人とされる。自分の行為が他者に相当な害を与えるようなときでも、その人は他者に対してよりも自分自身に与える効果をより心配しているようである。

自分の振る舞いを気にしない:学校、仕事、その他の重要な活動でまずい、問題のある振る舞いを心配しない。期待されていることが明らかなときでもうまくやるのに必要な努力をすることがなく、典型的には自分のまずい振る舞いについて他者を非難する。

感情の浅薄さまたは欠如:浅薄で不誠実で表面的な方法(例:示される情動とは相反する行為、情動をすばやく“入れたり”“切ったり”切り替えることができる)以外では、他者に気持ちを表現したり情動を示さないか、情動の表現は利益のために用いられる(例:他者を操ったり威嚇するために情動が表現される)。

現在の重症度を特定せよ

軽症:診断を下すのに必要な素行上の問題はあっても、わずかに超える数であり、素行上の問題は他者に比較的小さな害を及ぼしている(例:嘘をつくこと、怠学、許可なく夜遅くまで外出する、その他の規則違反)。

中等症:素行上の問題の数とその他者への影響は、軽度と重度で特定されるものの中間である(例:被害者の面倒ではない盗み、器物破壊など)。

重度:診断を下すに必要な数を大きく超える素行上の問題が多くあり、または素行上の問題が他者にかなりの被害を引き起こす(例:強制的な性行為、身体的に残酷な行為、凶器の使用、被害者の面前での盗み、器物破損および家宅侵入)。

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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