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こころの病気のはなし > 専門編 > パニック障害のトップ > パニック障害について(2-7)

パニック障害の治療 認知行動療法関連

T.認知療法

図-8.パニック障害の認知モデル

パニック発作に対する認知モデルという仮説に基づいた心理学的治療法(カウンセリング)です。薬物療法と同等の効果が期待できる最近注目の治療法です。パニック障害だけでなく、うつやその他の精神障害にも幅広く適応されています。

パニック障害に対する認知モデル(図-8.)は以下の様に説明されます。まず、発作の引き金になる刺激(例えば電車に乗るなど)に対して、脅威(危険)を感じ不安が高まってくると、身体感覚の変化(動悸・呼吸困難など)が生じます。この身体感覚に対して「心臓発作を起こしかけている」「窒息死する」など、「症状が進んでいって生命の危機に至る」イメージ(誤って破局的に解釈する)が頭の中で自動的に浮かんできます(自動思考)。それによって、さらなる危機感が生じ不安が増悪し、身体症状がエスカレートしていくといった悪循環が生じるのです。

この悪循環に対して、思考記録表と呼ばれる記録用紙を用います。具体的には、破局的解釈を含む自動思考に対して、そう考えた理由(根拠)とその内容と矛盾する事実(反証)を立てることによって、より現実的で役に立つバランスの良い考え方(適応的思考)を導き出します(表-8.)。この方法により不安や恐怖感を軽減しパニック発作の進行を予防していきます。 

U.エクスポージャー法[曝露(ばくろ)療法]

行動療法の中心となる治療です。広場恐怖(恐怖症性回避)を引き起こす場所・場面に対して、実際直面する事(外的エクスポージャー)により、不安や恐怖感に徐々に慣れてもらう方法と、深呼吸や足踏みジョギング等を患者に促す事で「擬似パニック発作」を誘発する方法(内受容性エクスポージャー)があります。

不安場面に直面すると、一時的に強い不安を経験しますが、最終的には安全な状態に落ち着いていきます。
慣れにより次回からは同じ場面に対して不安や恐怖感が軽減し少しずつ自信がついていきます。実際、場面によって生じる不安や恐怖感の程度が異なるので、患者に不安を感じる場面をリストアップしてもらいます。
次にそれらを不安度の強いものから弱いものへと並べ変え一覧表(不安階層表)を作成してもらいます。もっとも強い不安を感じる場面を100点とし、不安を感じない状態を0点(この点数を自覚的障害単位:SUDという)としてすべての場面に対して評点します(表-9.)。

一般的には中等度の不安場面(SUD40〜50点程度)から練習し、徐々にSUDが高い場面へチャレンジしていくと効果的と言われています。SUDが高い場面に向き合うに当たって、配偶者やパートナー、友人の支えが力になることもあります。曝露療法の治療効果としては、89%でパニック発作が消失したとの報告もあり、薬物療法と同等の効果がある事がわかっています。

表-9. 不安階層表の一例

場面 SUD
自宅で夕食後くつろいでいる
高層ビルのエレベーターに乗る
歯医者に行く
理髪店で散髪をする
妻と私鉄電車(各駅停車)に約30分間乗車する
妻と地下鉄に約20分間乗る
自家用車で高速道路を運転する
妻と私鉄電車(急行電車)に約30分間乗車する
妻と映画を観る
自家用車の運転中渋滞に巻き込まれる
一人で私鉄電車(各駅停車)に約30分間乗車する
一人で私鉄電車(急行電車)に約30分間乗車する
一人で映画を観る
飛行機(国内線)に乗る
0
10
20
30
30
40
45
50
60
70
70
80
90
100

(坂野雄二ら,2001より改変引用)

 

V.系統的脱感作(かんさ)法

想像的エクスポージャー法とも言います。広場恐怖の程度が強く、不安階層表のSUDが最低点の場面ですら直面困難な場合は、まずその場所に行ったイメージを思い浮かべてもらう方法が適切です。一種のイメージトレーニングと考えていいでしょう。

 

W.リラグゼーション・トレーニング[弛緩(しかん)訓練法]

身体をリラックス(ゆるめる=弛緩(しかん))させる事で、不安やパニック発作の軽減を図る事が出来る、行動療法の補助的方法です。額→眼の周辺→顎→首→肩→背中→上腕→下腕→手→胸→下腹→腰→大腿→尻→すね→足先といった順番で筋肉を緊張させ、弛緩(しかん)させるという事を繰り返します。これを「漸進(ぜんしん)的筋(きん)弛緩(しかん)法」と言います。緊張は5秒ほど、弛緩は10秒ほどです。繰り返し練習する事で、よりリラックス出来る様になり、突発的な不安やパニック発作に備えます。

リラグゼーション・トレーニング単独の治療反応率は56%との報告もあります。(American Psychiatric Association:Practice Guidelines for the Treatment of Psychiatric Disorders Compendium,first Japanise edition,医学書院,東京:P580,2006)

 

X.呼吸訓練

不安や緊張がある人は呼吸が浅く不規則になる事が多い事から考え出された、行動療法の補助的方法です。浅く不規則な呼吸をしていると、体内の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、不安の身体症状がますます現れやすくなるので、これを是正する事は有効な事があります。片手を胸に、片手を腹に当て、お腹の方が動くように息を吸います(腹式呼吸)。ゆっくりと4つ数えるまで息を吸い、また4つ数える間に吐きます。ゆっくりと大きく呼吸する様に意識します。これを調節呼吸(controlled breathing)と言い、最低4分以上続ける必要があります。

 

※以上、T.〜X.の治療法を「認知行動療法」と総称する事もあります。パニック障害における認知行動療法の反応率は78%程度であり、また再発率は長期の追跡調査(6ヶ月〜8年間)でも12%程度と言われ、薬物療法の効果に匹敵すると言われます(American Psychiatric Association:Practice Guidelines for the Treatment of Psychiatric Disorders Compendium,first Japanise edition,医学書院,東京:P580,2006)

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