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物質・医薬品誘発性性機能不全

物質・医薬品誘発性性機能不全

Sub-stance/Medication-induced Sexual Dysfunction

 

疾患の具体例

25歳、男性。自慰やセックスでオルガズムに達することができず、苦痛を感じています。1年ほど前に抗うつ薬を使用するようになってから、この性機能不全が始まりました。医師と相談し、ほかの種類の抗うつ薬をいくつか試してみると、ある組み合わせの処方では抑うつ効果が得られ、性機能不全にもならないことが分かりました。

 

特 徴

物質・医薬品誘発性性機能不全は、何らかの物質や医薬品を使用したことによって生じる性機能障害です。重篤な薬物中毒または離脱のすぐ後か、医薬品を使用した後に生じます。原因となる物質として以下があげられます。

 

中毒によって性機能不全が生じうる物質

アルコール、オピオイド、鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬、精神刺激薬(コカイン含む)、その他の(または不明な)物質

アルコールは、中枢神経系の活動全般を抑制するため、男性の勃起障害を引き起こすことがあります。男性の性腺に直接作用し、テストステロン(男性ホルモン)の濃度を減少させるという報告もあります。

 

離脱によって性機能不全が生じうる物質

アルコール、オピオイド、鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬、その他の(または不明な)物質

 

性機能不全を誘発しうる医薬品

抗うつ薬、抗精神病薬、ホルモン避妊薬

精神科で使用される薬物は、性的能力への作用を持っているものがいくつもあります。抗うつ薬の使用でもっともよく報告される副作用は、オルガズムまたは射精の困難です。性欲減退や勃起不全はあまり頻繁ではありません。また、精神科関連以外の医薬品も性機能不全と関連することがあります。心臓血管系、細胞障害性、胃腸系、ホルモン剤などがあげられます。

 

なお、多くの物質は、少量では一時的に性機能を高めたとしても、使用を継続することで性機能障害が生じます。鎮静薬、抗不安薬、催眠薬、特にアヘンやオピオイドの使用は必ず性的欲求を減退させます。違法薬物の使用は性欲減退、勃起不全、オルガズムの困難と関連しています。慢性アルコール乱用や慢性ニコチン乱用も勃起不全と関連しています。

 

物質・医薬品誘発性性機能不全は、他の原因による性機能不全との鑑別が難しい場合があります。そもそも多くの精神疾患(抑うつ障害、双極性障害、不安症、精神病性障害など)は、性機能障害と関連があるからです。物質・医薬品が原因であると特定するには、性機能不全が生じたタイミングと物質・医薬品の使用が関連していることが重要です。物質・医薬品を使用した後に性機能不全が生じ、使用を中止すると症状が消える。また使用すると再発するという場合は、明確に診断できます。

 

有病率

この障害の明確な有病率は不明です。何らかの疾患の治療中に性機能障害が生じたとしても、患者さんが医師に告げることを躊躇するためです。ただ、抗うつ薬誘発性性機能不全の有病率はわかっている部分があります。モノアミン酸化酵素阻害薬、三環系抗うつ薬、セロトニン作動性抗うつ薬、セロトニンーアドレナリン作動性抗うつ薬を使用している人の約25〜80%に性的な副作用が報告されています。

また、抗精神病薬を服用している人の約50%が、性欲減退、勃起不全、潤滑、射精、オルガズムの問題など性的副作用を経験しています。

なお、この障害は男女ともに生じる可能性があります。物質によって、有病率が変わるかもしれません。

 

経 過

この障害の経過は、原因となる物質・薬物あるいは症状によって異なります。抗うつ薬誘発性性機能不全は、早ければ使用から8日で発症します。軽度〜中等度のオルガズム遅延は、約30%が6カ月以内に自然寛解します。セロトニン再取り込み阻害薬誘発性性機能不全は、使用をやめても続くことがあります。オピオイドは使用をやめた後に早漏が生じることが時々あります。

医薬品乱用から性機能不全が発症するまでの期間は不明です。ニコチンやアルコールによる影響は、使用から何年もたつまで現れないことがほぼ確実です。

なお、この障害は加齢とともに増加していくと考えられています。

 

治 療

原因となる物質・医薬品の使用を中止することで、性機能不全が解消する場合があります。中止できない医薬品の場合は、ほかの種類の医薬品を試すことで症状が解消するかもしれません。ほかに精神療法や行動療法などが功を奏す可能性があります。精神療法はパートナーと一緒に受けるタイプのものもあります。

 

診断基準:DSM-5

. 臨床的に意味のある性機能の障害が臨床像の中で優勢である。

. 病歴、身体診察、または検査所見から、次の(1)と(2)の両方の証拠がある。

  1. 基準Aの症状が、物質中毒中またはその直後、または医薬品からの離脱または曝露の後に生じている。
  2. 関連した物質・医薬品は基準Aの症状を生じる可能性がある。

 

. その障害は、物質・医薬品誘発性ではない性機能不全ではうまく説明されない。そのような独立した性機能不全の証拠には、以下のものが含まれるであろう。

症状が物質・医薬品の使用開始に先行する;症状が、急性の離脱または重篤な中毒が終わった後、相当な期間(例:約1カ月間)持続している;または物質・医薬品誘発性ではない性機能不全が独立して存在していることを示唆する他の証拠(例:物質・医薬品に関連しない反復エピソードの既往歴)がある。

. その障害は、せん妄の経過中に限って起こるものではない。

. その障害は、その人に臨床的に意味のある苦痛を引き起こしている。

注:基準Aの症状が臨床像において優勢であり、かつ臨床的関与に値するほど十分に重度であるときのみ、物質中毒または物質離脱に代わって下されるべきである。

 

該当すれば特定せよ

中毒中の発症:その物質による中毒の基準を満たし、症状が中毒中に発症した場合

離脱中の発症:その物質からの離脱の基準を満たし、症状が離脱中または直後に発症した場合

医薬品使用後の発症:医薬品の開始、または修正後や変更後に症状の生じることがある。

 

現在の重症度を特定せよ

軽度:性的活度の25〜50%の機会で生じる。

中等度:性的活動の50〜75%の機会で生じる。

重度:性的活動の75%以上の機会で生じる。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

『DSM-5 ケースファイル』(医学書院)

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